
隣の家の木がはみ出してきて果物がどんどん落ちてくる――困っているけれど、ご近所だからこそ強く言い出しにくい。そのままにしておくと近隣関係がこじれ、最終的に法的な紛争に発展するケースもあります。
解決策はあります。しかも、関係を壊さずに対処する具体的なステップがあります。ただし、焦って間違った行動を取ると逆に自分が加害者になる可能性があるため、このあと正しい手順を順番に整理します。
やってはいけないNG行動
- 相手の許可なく枝を勝手に切る → 器物損壊のリスク(改正後も催告が原則必要)
- 報復的に隣の果物を取る → 窃盗罪に問われる可能性がある
- SNSで状況を晒す → 名誉毀損のリスクがある
【要注意】焦ってやってはいけない法的リスク
1つ目は、いきなり枝を切ること。現在の民法では一定の条件を満たせば越境した枝の切除が認められていますが、「催告」という手順を経ずに切れば、器物損壊罪に問われる可能性があります。
2つ目は、腹いせに隣の木の実を勝手に取ること。「迷惑をかけられているのだから当然」と思いがちですが、そもそも無断で果実を取る行為自体がアウトになる可能性があることを忘れないでください。
3つ目は、直接的に強い口調で詰め寄ること。感情的な口論は近隣関係を決定的に壊し、その後の交渉が一切できなくなるケースがあります。
記録がないまま放置すると、問題がエスカレートしても証拠不足で相談先に動いてもらえないケースがあります。逆に、最初の段階で記録さえ残しておけば、後からの相談がスムーズに進む傾向があります。
隣の木の実トラブルを解決する4つのステップ
ステップ1:はみ出しの状況を写真で記録する
まずは「何がどのくらいはみ出しているか」を日付入りの写真で記録します。スマートフォンのカメラで構いません。撮影のポイントは以下の3つです。
- 敷地の境界線がわかるアングル(フェンスや境界杭を含める)
- はみ出した枝と果実の状態
- 落果が散乱している場合はその状況
「後からまとめて記録しよう」と思っても、具体性がなく証拠として弱くなるケースがあります。気づいたタイミングで1枚ずつ残すのが効果的です。
ステップ2:隣人に穏やかに相談する
記録ができたら、次は隣人に声をかけます。攻撃的にならず、相談する姿勢で切り出すのがポイントです。
言い方の例:「お忙しいところすみません。お庭の木の枝が少しうちの敷地に伸びてきていて、実が落ちてくるようになりました。お手数ですが一度見ていただけますか?」
この時点で解決することも多いです。相手が「気づいていなかった」というケースは少なくありません。
最初の一声が一番ハードルが高い。でも「困っているから相談させてください」というスタンスで伝えれば、大抵の人は応じてくれるよ。まず声をかけること。それだけでいい。
ステップ3:民法233条に基づく枝の切除を依頼する
口頭で伝えても対応してもらえない場合は、書面で依頼を出します。これが民法233条における「催告」にあたります。
書面の例:「〇月〇日付でご連絡いたします。お宅の〇〇の木の枝が当方敷地に越境しております。お手数をおかけしますが、〇月〇日までに枝の剪定をお願いできますでしょうか。」
書面は日付を入れてコピーを保管しておきます。「催告した事実」と「相当期間(目安2週間程度)を与えた事実」が記録として残ります。
ステップ4:応じてもらえない場合は自治体・弁護士に相談する
催告しても相当期間内に対応がない場合、民法233条3項の要件を満たせば自分で枝を切除できる可能性があります。ただし、自力で判断せず、まずは以下の相談先に確認することをおすすめします。
- 自治体の無料法律相談(予約制が多いため早めに連絡)
- 法テラス(日本司法支援センター)の無料相談
- 不動産トラブルに詳しい弁護士への相談
隣人が応じてくれない・空き家の場合の突破法
隣人が長期不在、または空き家で所有者がわからない場合は、以下の方法で対処できます。
- 法務局で登記事項証明書を取得し、土地の所有者を確認する
- 自治体の空き家対策窓口に相談する(多くの自治体に設置されている)
- 所有者不明の場合、民法233条3項2号の要件に該当する可能性がある → 弁護士に確認
それでも解決しない場合は、民事調停(簡易裁判所)を申し立てる方法があります。裁判所というと大げさに感じるかもしれませんが、調停は話し合いの場であり、費用も比較的低額です。
相談先の一覧と次に検討すべきこと
- 法テラス(日本司法支援センター) ─ 無料の法律相談・費用立替制度あり
- 自治体の無料法律相談 ─ 弁護士会と連携した予約制の対面相談
- 弁護士会の法律相談 ─ 不動産・近隣トラブルに強い弁護士を紹介してもらえる
隣の木の実トラブルの全体像を確認したい方は、隣の家の柿を勝手に取ると窃盗?違法になる条件を整理で網羅的に整理しています。
参考法令・関連情報
- 民法(e-Gov法令検索) ─ 第233条(竹木の枝の切除及び根の切取り)
- 法務省:民法等の一部を改正する法律について

