
「自分のケースでも逮捕されるのか」「どのくらいの罰を受けるのか」。ネット上で脅迫行為をしてしまった方、あるいは脅迫を受けて相手を訴えたい方にとって、過去の事例が示す処罰の傾向は大きな判断材料になります。
ネット脅迫で実際に逮捕・起訴された事例をもとに、実刑になるパターンと示談で不起訴になるパターンの違いを整理します。
ネット脅迫で加害者が負けるパターンの傾向
「初犯だから罰金で済むだろう」と思われがちですが、実際は反復性や悪質性が認められれば初犯でも実刑判決に至るケースがあります。過去の事例を横断すると、ネット脅迫で厳しい判決を受けるケースには共通の敗因があります。
- 常習的・執拗な投稿:1回の投稿ではなく、同じ相手に対して繰り返し脅迫を行っているケース。裁判所は「単なる激情」と「継続的な加害意思」を明確に区別する
- 実名を挙げた具体的な脅迫:匿名の場で特定の個人を名指しし、「殺す」「刺す」のように具体的な害悪を告知するケース。対象の特定性と害悪の具体性が揃うと悪質と評価されやすい
- 示談拒否または反省の欠如:被害者との示談交渉の機会があったにもかかわらず拒否した場合、量刑が重くなる傾向がある。反省の姿勢が見えないことも裁判所の心証に影響する
重要事例①:ネットでの殺害予告で懲役10ヶ月の実刑
事件の背景
トランスジェンダーを公表している弁護士に対し、事務所サイトの問い合わせフォームを通じて「メッタ刺しにして殺害する」という内容のメッセージが繰り返し送られた事案です。加害者は、弁護士の社会的活動に対する不満を動機として、複数回にわたり殺害予告を送信しました。被害者は身の危険を感じ、警察に被害届を提出しました。
争点と判決結果
2024年1月11日、大阪地方裁判所の角田康洋裁判官は脅迫罪を認定し、懲役10ヶ月の実刑判決を言い渡しました。角田裁判官は判決理由で次の3点を明示しています(OUT JAPAN・ABCニュース 2024年1月11日報道)。
- 身勝手な動機:「被害者がLGBTに関し、被告人と異なる感情を持っているという身勝手な考えにもとづく犯行」
- 反復的・悪質な犯行:「単発ではなく9回にわたり、生命を脅かす告知をしていて悪質」
- 被害者への恐怖の大きさ:「被害者に与えた恐怖は大きい」
つまり、反復的な殺害予告+身勝手な動機+被害の重大性が揃ったことで、初犯であっても実刑判決に至ったケースです。
加害者の決定的なミスは、反復的・執拗な投稿を続けたことです。1回の投稿であれば罰金刑で済む可能性もありましたが、繰り返し行ったことで「常習性」が認定され、実刑が避けられなくなりました。
重要事例②:「いまから刺しに行く」で逮捕→示談で不起訴
以下は、早期示談が不起訴につながった典型的なパターンをもとにした説明用の例示です。特定の実在事件を紹介するものではありません。
事件の背景
ネット上の口論がエスカレートし、加害者がDMで「いまから刺しに行く」と送信した事案です。被害者が警察に通報し、加害者は逮捕されました。加害者は「売り言葉に買い言葉で本気ではなかった」と主張しましたが、書き込みの内容自体が生命への害悪告知に該当すると判断されました。
争点と結果
逮捕後、加害者側の弁護士が早期に介入し、被害者との示談交渉が行われました。示談金の支払いと謝罪文の提出を経て示談が成立し、被害者が被害届を取り下げたため、不起訴処分となりました。
つまり、早期に弁護士が介入し、示談を成立させたことが不起訴に直結したケースです。
この事例の分岐点は早期示談の実現です。逮捕されてから弁護士に依頼するまでのスピードが、結果を大きく左右しました。もし示談交渉が遅れていた場合、起訴され罰金刑または拘禁刑が科された可能性があります。
なぜこれらの事件はこのような結果になったのか?
2つの事例を比べると、結果を分けた要因は明確です。
- 常習性 vs 単発:事例①は反復的な投稿、事例②は口論中の一言。常習性の有無で量刑が大きく変わる
- 示談拒否 vs 早期示談:事例①は示談が成立しなかった(または示談の機会がなかった)のに対し、事例②は早期示談で不起訴。示談の成否が最終的な処分を決定づけている
- 反省の姿勢:事例②では弁護士を通じて謝罪文を提出しており、反省の姿勢が不起訴処分の判断材料になった
常習か単発かで結果がガラッと変わるケースがある。やってしまったことは消せないけど、止められるうちに止めて、弁護士に状況を伝える。それが一番の分岐点。
自分のケースが当てはまるか不安な方へ
「弁護士に相談するにはお金がかかりそう」「1回だけだから大丈夫だと思っていた」と感じて、相談を後回しにしてしまう方も少なくありません。この記事で紹介した事例はあくまで過去のケースであり、個別の状況によって判断は変わります。自分のケースがアウトかどうかを確認したい方は、ケース別の白黒判定を整理したジャッジ記事で判定基準を確認してください。

