「脅迫」と「恐喝」の違いがよくわからないまま放置すると、いざ自分がトラブルに巻き込まれたとき、どこに相談すべきかの判断が遅れてしまうケースがあります。
結論から言うと、脅迫罪と恐喝罪の最大の違いは「金銭などの財産を要求しているかどうか」です。脅迫罪は「害悪の告知」だけで成立しますが、恐喝罪は「害悪の告知+財物の交付要求」がセットで必要になります。ただし、脅しの程度や状況によって強要罪や強盗罪に切り替わるケースもあるため、このあと順番に整理します。
脅迫と恐喝の違いは?結論から整理
脅迫罪(刑法第222条)と恐喝罪(刑法第249条)は、どちらも「人を脅す行為」が関わる犯罪ですが、成立する条件がまったく異なります。金銭・財物の要求があるかで変わる
脅迫罪は「害悪の告知」のみで成立。恐喝罪は「害悪の告知+財物の要求」がセットで成立。金銭や物品の要求があるかどうかが最大の分かれ目です。
なぜ違う?脅迫罪・恐喝罪それぞれの法的根拠
脅迫罪(刑法第222条)の成立要件
脅迫罪は、相手またはその親族の「生命・身体・自由・名誉・財産」の5つに対して「害を加えるぞ」と告げる行為(害悪の告知)によって成立します。ただし、どんな発言でも当てはまるわけではなく、一般的な感覚で「怖い」と感じるレベルの内容であることが条件です。 ポイントは、実際に害を加えなくても「告知しただけ」で罪になるという点です。たとえば「殴るぞ」と言っただけで、実際に殴らなくても脅迫罪は成立する可能性があります。
刑法第222条(脅迫)は、相手やその家族の命・体・自由・名誉・財産に対して「害を加える」と告げる行為を脅迫罪として定めています。法定刑は2年以下の拘禁刑、または30万円以下の罰金です。
告知の手段は問われません。口頭・電話・メール・SNSのメッセージなど、どんな方法であっても成立します。
恐喝罪(刑法第249条)の成立要件
恐喝罪は、脅迫(または暴行)を手段として相手を怖がらせ、その結果として金銭や物品などの「財物」を交付させた場合に成立します。 つまり、恐喝罪は「脅す行為+財産を奪う行為」の2段階構造になっています。脅迫罪との一番の違いは、財物を交付させる目的で要求を伴っていたかどうかです。要求をしたのに相手が実際には支払わなかった場合でも、脅迫罪ではなく恐喝未遂罪(刑法第249条・第250条)として扱われます。
刑法第249条(恐喝)は、人を脅して金銭や物品を渡させる行為を恐喝罪として定めています。法定刑は10年以下の拘禁刑で、脅迫罪より重く設定されています。
恐喝罪の罰則が脅迫罪よりも格段に重い理由は、被害者の財産が実際に奪われている点にあります。なお、財物そのものでなく「財産上の利益」(借金の免除を迫るなど)を得た場合も、恐喝罪(2項恐喝)が成立します。
脅迫への反撃が正当防衛(刑法第36条)として認められるかどうかも気になるところです。その分かれ目は「正当防衛はどこまで許される?過剰防衛との分かれ目」で整理しています。
こんなケースはどっち?具体例で判定
以下の例は実際に起こりうる典型的なパターンをもとにした説明用の例示です。特定の実在事件や確定判決を紹介するものではありません。| シチュエーション | 判定 | 解説 |
|---|---|---|
| 「殴るぞ」と言っただけで、金銭の要求はしていない | 脅迫罪の可能性 | 害悪の告知(身体への害)で、財物の要求はない。相手が「怖い」と感じるレベルの発言であれば脅迫罪が成立する可能性がある(恐喝罪にはならない) |
| 「秘密をバラされたくなければ金を出せ」と要求し、相手が支払った | 恐喝罪 | 名誉に対する害悪の告知+財物の交付があるため、恐喝罪が成立する可能性がある |
| 路上で「金を出せ」と脅し、抵抗できないほどの暴力を振るって金品を奪った | 強盗罪の可能性 | 反抗を抑圧する程度の暴行・脅迫を用いた場合、恐喝罪ではなくより重い強盗罪(刑法第236条)が成立する可能性がある |
| SNSで「訴えるぞ」と書き込んだ | ケース次第 | 正当な権利行使の範囲であれば原則として脅迫罪にはあたらないとされている。ただし、権利行使の意思がなく相手を畏怖させる目的だけで告知した場合は脅迫罪が成立する可能性がある |
強要罪・強盗罪との違いも押さえよう
脅迫罪・恐喝罪と混同されやすい犯罪として、強要罪と強盗罪があります。4つの罪の違いを整理すると、以下のようになります。| 罪名 | 条文 | 要件のポイント | 罰則 |
|---|---|---|---|
| 脅迫罪 | 刑法第222条 | 害悪の告知で相手を怖がらせる | 2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金 |
| 恐喝罪 | 刑法第249条 | 脅迫+財物の交付を要求し、相手が渡す | 10年以下の拘禁刑 |
| 強要罪 | 刑法第223条 | 脅迫や暴行で義務のないことをさせる・権利行使を妨害する | 3年以下の拘禁刑 |
| 強盗罪 | 刑法第236条 | 反抗を抑圧する程度の暴行・脅迫で財物を奪う | 5年以上の有期拘禁刑 |
脅迫・恐喝を受けたらどうする?対処の手順
「脅迫や恐喝を受けているかもしれないが、どこに相談すればいいかわからない」「何から始めればいいかわからない」と感じている方も少なくないはずです。 まず覚えておいてほしいのは、証拠がなくても相談はできるということです。完璧な証拠がなくても、相談窓口では状況を聞いたうえで今後の対応をアドバイスしてくれます。次の3つから、今日できることを始めてみましょう。今日できる3つの行動
| ステップ | やること | ポイント |
|---|---|---|
| 1. 記録する | やりとりのスクリーンショットを保存する。電話や対面の場合は、可能であれば録音する | 日時・場所・相手の言葉をできるだけ正確に残す |
| 2. メモする | いつ・どこで・誰から・何を言われたかをメモに書き出す | 記憶が鮮明なうちに、スマホのメモアプリでも紙でもOK |
| 3. 相談する | 警察相談専用電話(#9110)または法テラス(0570-078374)に電話する | 緊急性がある場合は迷わず110番。#9110は緊急ではないが相談したい場合に使える |
「証拠がないから相談しても意味がない」と思って止まっちゃう人がいるけど、それは違う。まずメモだけ始めよう。
実際の事例・判例から見る裁判所の判断傾向
脅迫罪と恐喝罪の境界が争われるケースでは、裁判所は「財物を交付させる目的の告知が伴っていたかどうか」を重視する傾向があります。脅迫罪については、害悪の告知が「一般人を畏怖させるに足りる程度」であるかどうかが判断基準とされています。相手が実際に恐怖を感じたかではなく、通常の人であれば怖いと感じる内容かどうかで評価されます。
恐喝罪と強盗罪の区別では、暴行・脅迫の程度が「抵抗できないほど強いかどうか(反抗を抑圧する程度)」に達していたかどうかが争点になります。たとえば複数人で取り囲んで金品を要求した場合、状況によっては恐喝ではなく強盗と評価されるケースがあります。
また、いわゆる「カツアゲ」については、被害者の年齢・体格差・人数差・場所の状況など、総合的な事情をもとに恐喝か強盗かが判断される傾向があります。
まとめとQ&A
脅迫と恐喝の違いは「金銭などの要求があるかどうか」に集約されます。脅迫罪は害悪の告知だけで成立し、恐喝罪はそれに加えて財物を交付させる要求が伴います。要求どおりに支払われなくても恐喝未遂罪として扱われるため、「支払われたかどうか」ではなく「要求があったかどうか」が分かれ目です。さらに、暴行・脅迫の程度が激しければ強要罪や強盗罪に切り替わる可能性もあります。もし「脅されている」「金を要求されている」と感じたら、完璧な証拠がなくてもまず記録を始め、相談窓口に連絡してください。早めに記録を残しておけば、後から状況を正確に伝える裏付けになります。逆に行動しないまま放置すると、証拠が失われて後から争うことが難しくなるケースがあります。
迷ったときほど、まずは今日できることから動いてみることが大切です。気になるやりとりのスクリーンショットを1枚残すところから始めてみてください。
脅されたが金銭の要求はなかった場合、何罪になりますか?
金銭や物品の要求がなく、相手が「怖い」と感じるレベルの害悪の告知(「殴るぞ」「バラすぞ」など)があった場合は、脅迫罪(刑法第222条)が成立する可能性があります。告知の手段は口頭・電話・SNSなど問いません。ただし、正当な権利行使の範囲にとどまる場合は脅迫にあたらないとされることもあるため、具体的な判断は専門家に相談することをおすすめします。
LINEやSNSでの脅迫も罪になりますか?
はい、対象になります。テキストだけでなく、音声メッセージや画像による脅しも同様です。投稿やメッセージは相手に削除されると証拠が残らなくなるため、脅迫を受けたらすぐに画面をスクリーンショットで保存しておくことが大切です。匿名アカウントからの発信でも、発信者の特定は可能とされています。
脅迫を受けたら、まず何をすればいいですか?
まず、やりとりの記録(スクリーンショット・録音・メモ)を残してください。証拠がそろっていなくても、警察相談専用電話(#9110)や法テラス(0570-078374)に相談できます。緊急性がある場合は迷わず110番通報してください。

