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サーベル登録拒否事件(最判平2.2.1)

 

まず前提として、日本では日本刀や猟銃などの危ない物を持つためには登録が必要です。
それを踏まえた上で見ていきましょう。

 

 

ここでのポイント

 

行政の作ったルールは、国の作ったルール自体の意味を変えるようなことをしていないかどうか?

 

 

事案の流れ

 

Xは、「国から、具体的な国のルールを作ることを任されている行政」に対して、サーベル(外国刀)を持ちたいと登録の申請をしました。
しかし、行政のルールでは「刀を持つのは日本刀のみ許す」、としていたため行政から拒否されました。

 

そこでXは、「日本刀のみ許す」とする行政のルールは、国の作ったルール以上のことをしているとして処分の無効を裁判所に訴えました。

 

 

事案

 

Xは、東京都教育委員会に対して、鉄砲刀剣類所持等取締法14条1項および2項に基づき、外国製サーベルの登録を申請した(同法3条1項6号によると、14条の定める登録を行うことで、刀剣類の所持が認められることとなる。)しかし、鉄砲刀剣登録規則4条2項に登録の要件として日本刀であることが定められていたので、東京都教育委員会は登録を拒否した。

 

そこでXは、この規定は法律の委任の範囲を逸脱し無効であると主張し、本件拒否処分の取消しを求めて出訴した。

 

 

判旨

 

裁判所は、「鉄砲刀剣類所持等取締法(以下、『法』という。)14条1項による登録を受けた刀剣類が、法3条1項6号により、刀剣類の同条本文による所持禁止の除外対象とされているのは、刀剣類には美術品として文化財的価値を有するものがあるから、このような刀剣類についての登録の途を開くことによって所持を許し、文化財として保存活用を図ることは、文化財保護の観点からみて有益であり、また、このような美術品として文化財的価値を有する刀剣類に限って所持を許しても危害の予防上重大な支障が生ずるものではないとの趣旨によるものと解される。…日本刀については、古くから我が国において美術品として鑑賞の対象とされてきた…という認定事実に照らすと、…規則が文化的価値のある刀剣類の鑑定基準として、前記のとおり美術品として文化財的価値を有する日本刀に限る旨を定め、この基準に合致するもののみを我が国において前記の価値を有するものとして登録の対象にすべきものとしたことは、法14条1項の趣旨に沿う合理性を有する鑑定基準を定めたものというべきであるから、これをもって法の委任の趣旨を逸脱する無効のものということはできない」と述べている。

 

銃刀法について 

 

 

参考

 

銃砲刀剣類所持等取締法3条1項:何人も、次の各号のいずれかに該当する場合を除いては、銃砲又は刀剣類を所持してはならない。6号:第十四条の規定による登録を受けたもの(変装銃砲刀剣類を除く。)を所持する場合

 

14条1項:都道府県の教育委員会は、美術品若しくは骨とう品として価値のある火縄式銃砲等の古式銃砲又は美術品として価値のある刀剣類の登録をするものとする
2項:銃砲又は刀剣類の所有者(所有者が明らかでない場合にあつては、現に所持する物。以下同じ)で前項の登録を受けようとするものは、文部科学省令で定める手続により、その住所の所在する都道府県の教育委員会に登録の申請をしなければならない

 

 

つまり?

 

国の作るルールを変えることは、国の目的を変えることと同じなので違法となります。
それの疑いがあるとして、Xは裁判所に審査を要求しました。

 

それに対する裁判所の反応は、「行政のルールが『刀の登録は日本刀のみ』としても問題なし」としました。
なぜなら、日本刀は昔から美術品として鑑賞されてきました。
よって、日本刀は美術品として文化的価値がある、ということになります。

 

文化財の保護は日本にとって有益です。
また、美術品として文化的価値を持つ日本刀を持っていても、安全面から考えて、特に危険ではないという考えになります。
このような理由から、「刀を持つのは日本刀に限る」としても許されます。

 

つまり、刀などを取り締まる行政のルールは合法となり、外国刀は日本で持てません。

 

 
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