
こんにちは、法律オタクのK先輩です。「退職届を出したのに受け取ってもらえない」「辞めるなら損害賠償を請求すると脅された」──こんな経験はありませんか?実はこれ、法律の世界では「よくある相談」のひとつなんです。結論から言えば、あなたには会社を辞める権利があり、会社はそれを止める権限を持っていません。この記事では、退職にまつわるトラブルの全体像を整理し、あなたが安心して次の一歩を踏み出せるようにガイドします。
結論:「辞める権利」は法律で守られている
まず、一番大事なことを断言します。
- 正社員(期間の定めのない雇用)の場合:民法の規定により、退職の意思を伝えてから一定期間(原則2週間)が経過すれば、会社の同意がなくても雇用契約は終了します。つまり、会社が「ダメだ」と言っても、法律上は辞められます。
- 「辞めるなら損害賠償」という脅しは、ほとんどの場合ハッタリです。労働基準法には、「あらかじめ違約金や損害賠償額を決めておくこと」を禁止する規定があります。
- 注意点:ただし、引き継ぎを一切せずに突然いなくなるなど、会社に具体的な損害を故意に与えた場合は、別の法理(不法行為)で責任を問われる可能性がゼロではありません。「辞める権利」と「最低限の誠実さ」は両立させましょう。
なぜそうなる?退職の自由を支える法律の考え方
なぜ会社員はいつでも辞められるのか?それは、日本の法律が「人を強制的に働かせ続けることはできない」という大前提に立っているからです。
考えてみてください。もし「会社がOKを出すまで絶対に辞められない」というルールだったら、それはもはや自由な雇用ではなく「拘束」ですよね。近代の労働法は、働く人の自由を守ることを最も大切にしているんです。
一方で、会社側にも事業を続ける権利はあります。だから法律は「急に辞められたら会社も困るよね」ということで、「辞める意思を伝えてから一定の猶予期間を置く」というバランスを取っています。これが民法に定められた「2週間ルール」の考え方です。
争点になりやすいのは以下のポイントです。
- 「退職の意思表示」は会社の承認が必要か? → 不要です。退職手続きは、相手の承認を待つ「お願い(リクエスト送信)」ではなく、自分の意思で完了させる「通知(アプリの解約ボタン)」のようなものです。
- 「就業規則に1ヶ月前と書いてある」場合はどうなるか? → 民法の規定と就業規則のどちらが優先するかには議論がありますが、民法の規定は強い効力を持つとされています。
- 損害賠償は本当に請求されるのか? → 「辞めたら違約金○万円」とあらかじめ決めることは、規約に書いていない不正な違約金や、OSの基本ルールを無視したアプリ独自の理不尽な課金設定のようなもので、労基法で明確に禁止されています。
よくあるケース別の判断
自分の状況に近いケースをチェックしてみましょう。
| ケース | 判定 | 解説 |
|---|---|---|
| 上司に口頭で「辞めます」と伝えたが「考え直せ」と引き止められている | 辞められる(セーフ) | 退職の意思表示は口頭でも法的に有効です。ただし証拠を残すために書面で伝えるのがベターです。 |
| 退職届を出したが上司に破り捨てられた | 辞められる(セーフ) | 退職届は会社の承認が不要な一方的な意思表示です。受取拒否されても内容証明郵便を使えば法的に届いたことになります。詳しくは内容証明ガイドを参照。 |
| 「辞めるなら損害賠償を請求する」と脅された | 会社側がアウト(違法の可能性) | あらかじめ違約金を定める契約は労基法で禁止されています。脅し自体がパワハラに該当する可能性も。詳しくはジャッジ記事へ。 |
| 契約社員(有期雇用)で契約の途中だが辞めたい | 条件付き | 契約社員(期間の定めがある契約)で、まだ契約期間が残っているけれど辞めたいという場合、本来は期間の途中で辞めるにはやむを得ない理由が必要ですが、契約の初日から1年以上が経過していれば、法律上のルールによっていつでも辞める手続きができるようになります。ただし、一部の高度な専門知識を持つ方や、定年後の再雇用の方などは、このルールが適用されない例外設定になっている場合がありますので、ご自身の状況を確認してみてください。 |
| 引き継ぎを全くせずに翌日から出社しなくなった | 退職自体はセーフだが、リスクあり | 辞める権利はあります。ただし、引き継ぎ放棄によって会社に具体的な損害が発生した場合、損害賠償を請求される可能性はゼロではありません。 |
やってはいけない行動(重要)
退職トラブルでは、怒りや焦りからやってはいけない行動を取ってしまうケースが少なくありません。以下は絶対に避けてください。
- 無断欠勤(バックレ)を続ける:退職の意思表示をしないまま出勤しなくなると、懲戒解雇の対象になり得ます。懲戒解雇になると転職活動に大きな傷がつきます。
- 腹いせに会社のデータを消去・持ち出す:これは不法行為であり、場合によっては刑事罰(不正競争防止法違反など)に問われます。自分の退職の権利とは全く別の問題として、損害賠償を請求される正当な根拠を相手に与えてしまいます。
- SNSで会社の内部情報を暴露する:名誉毀損や秘密保持義務違反に該当するリスクがあります。感情的な発信は自分を不利にするだけです。
- 脅しに屈して退職を撤回する:一度「辞めません」と言ってしまうと、退職の意思表示を撤回したとみなされ、手続きが振り出しに戻る可能性があります。
被害にあった場合の対処法
もし会社からの違法な引き止めや脅しを受けている場合、以下の手順で対処しましょう。
- 証拠を残す:上司からの脅し発言はメモ・録音・メール等で記録しておきましょう。「辞めたら損害賠償だ」という発言そのものがパワハラの証拠になります。
- 退職届を内容証明郵便で送る:口頭や手渡しで受け取ってもらえない場合は、内容証明郵便(配達証明付き)で送付すれば、法的に「届いた」ことが証明されます。具体的な手順は実務ガイドをご覧ください。
- 労働基準監督署に相談する:退職妨害が悪質な場合は、最寄りの労働基準監督署に申告できます。会社に対する是正指導が行われることがあります。
- 弁護士や退職代行サービスを利用する:自力での交渉が難しい場合は、弁護士や弁護士監修の退職代行サービスに依頼することで、法的に安全かつ確実に退職手続きを進められます。
代表的な裁判の傾向
退職をめぐる裁判では、「会社が労働者の退職を不当に妨害し、さらに損害賠償を請求したが、裁判所に退けられた」というケースが多く報告されています。裁判所は基本的に、労働者の「辞める権利」を非常に強く保護する立場を取っています。詳しい判例分析は判例解説記事で紹介しています。
FAQ(よくある質問)
Q. 退職届を出してから2週間は出勤しないとダメ?
A. 法律上、2週間は雇用契約が続きますが、有給休暇の消化や会社との合意で即日退職も可能です。必ずしも出勤し続ける必要はありません。
Q. 退職届と退職願、どちらを出せばいいの?
A. スムーズに手続きを完了させたい場合は「退職届」を使いましょう。「退職願」が会社に承認されるのを待つ「保留状態のリクエスト」であるのに対し、「退職届」は送信した時点で手続きが確定する「解約通知」のようなものです。詳しくは用語解説記事をどうぞ。
Q. 研修費用や資格取得費用の返還を求められたら?
A. 「退職したら研修費を返せ」という合意は、実質的に退職を制限する違約金の定めとして労基法に違反し無効とされる傾向にあります。ただし、貸付金として明確に合意されている場合など、個別事情によるため弁護士への相談を推奨します。
まとめ
- 正社員は退職の意思を伝えてから原則2週間で、会社の同意がなくても辞められます。
- 「辞めたら損害賠償」とあらかじめ決めることは、労基法で禁止されています。
- 退職届を受け取ってもらえない場合の切り札は「内容証明郵便」です。
- 感情的な行動(バックレ、データ消去、SNS暴露)は自分を不利にするだけなのでやめましょう。
- 困ったら労働基準監督署や弁護士に相談し、一人で抱え込まないことが大切です。

