公法・私法

公法、私法とは

 

今日において、「公法」と「私法」という区別はさまざまな角度からされます。
まず公法とは、「国家と私人との法律関係」を規律する法です。
よって、行政活動を行う主体は国や公共団体であるので、行政法は「公法」であるといえます。また、国家と国民の基本的な関係について定めた憲法も「公法」だといえます。

 

一方、私法は「私人と私人との法律関係」を規律する法です。すなわち、民法のような社会生活上必然的に生ずる私人間相互の関係を規律する法であるといえます。

 

つまり、行政法は「公法」の一部として憲法と共通点を持ち、「私法」である民法とは区別されます。

 

公法と私法の説明 

 

 

背景

 

そもそも、公法と私法の区分が議論されるようになった理由は欧州の裁判所が2種類あるからです。19世紀初頭のフランスで司法裁判所とは別に行政裁判所を設けるシステムが採用されます。それが、19世紀後半にはドイツ行政法に受け継がれ、日本の明治憲法は影響を受けたのです。
裁判所が2種類あると、裁判所間の権限の範囲を決定する基準が必要になります。公法事件は行政裁判所、私法事件は司法裁判所と分けることにより、公法・私法の区分が重要な意味を持っていました。
これを、公法・私法の二元論といいます。

 

しかし、戦後、日本国憲法では憲法76条によって行政裁判所の設置を禁じられ、公法・私法の二元性の根拠が崩れました。よって、戦後、公法関係と見られる関係でも私法が適用されることがありますよ、とする三分説が唱えられるようになりました。
※三分説は公法・私法二元論を前提として成り立つ

 

 

三分説

 

三分説の伝統的理論として、行政上の法律関係に民法等私法が適用されるか否かについて、下図のように分類して区別されます。
すなわち、「権力関係」には私法の適用が排除されます。
そして、「非権力関係」の中で「私法関係」には私法のみが適用され、「公法上の管理関係」には例外的な場合を除き、原則私法規定が適用されます。

 

三分説の説明 

 

 

権力関係

 

税金の徴収や建築規制、土地収用など、国や地方公共団体が公権力の主体として一方的に形成する権利義務関係です。私法は「私的自治の原則」を基本とします。よって、このような一方的関係は私法規定の適用が排除され、公法関係であるとされます。
※私的自治の原則:人が自分の法律関係を、意思に基づいて自由に形成できる原則

 

 

公法上の管理関係

 

公企業(水道、鉄道など)の経営・管理、公物の設置・維持管理など、国や地方公共団体が財産の主体として私人と対等の立場で形成する権利義務関係です。したがって、原則として私法が適用されます。しかし、これらの作用が公益と関係があることから、法律が公益実現のために特別の規制を加えている場合があります。その場合、私法規定の適用が排除され、公法関係であるとされます。

 

ex .建物収去等請求事件(最判平成元年.9.19)
 →防火地域内の違反で公法、私法、どちらを適用するか?
 →建築基準法65条を民法234条の特則として、民法の規定の適用を排除。

 

 

私法関係

 

一般の事務用具の購入など、私人と対等の立場で私人間の経済取引と変わりなく形成される権利義務関係です。したがって、当然に私法規定の適用を受けます。よって、私法関係であるとされます。

 

 

 
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