はじめに
行政法とは、簡単に言うと行政に関する法です。
それでは、行政とは何か?というところから説明していきます。
ちなみに行政は、国家が公益の実現を目指して組織的に、継続的に行う能動的作用である、ということを念頭に置いておいて下さい。
行政の定義
「行政とは、一般的に国家作用のうちから立法・司法を除いたものである」
と、広く定義するのが一般的です。
このような考え方を、消極説=抗除説といい、多数説(通説)となります。
これらは憲法によって、国会に立法権(41条)、内閣に行政権(65条)、裁判所に司法権(76条1項)を割り振っているとも言えます。
以上のことから、消極説は三権分立に基づいて定義されていることがわかります。
日本国憲法41条:国会は最高機関であって、国の唯一の立法機関である。
65条:行政権は、内閣に属する。
76条1項:すべての司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。
一方で、積極説という学説もあります。
「(行政とは)法のもとに法の規制を受けながら、現実具体的に国家目的の積極的実現を目指して行われる、全体として統一性をもった形式的国家活動」
by田中二郎
少数説ではありますが、こういう説もあるんだな、と頭の隅に置く程度に知っておきましょう。
行政の活動
行政の活動には、「規制行政」、「給付行政」、「調達行政」など様々な種類があります。
現代では、さらに増加傾向にありますので、中身を理解することが大事です。
具体的に見ていく前に、行政の性質について少し話しておきます。
行政は、権力行政、非権力行政と2つの性質に分けられます。
権力行政は、相手方の意思にかかわらず一方的に行われる行政。
例えば、課税処分のようなものです。
(例)行政処分、行政強制など
非権力行政は、私たち国民の同意のもとに行われる行政をいいます。
(例)行政計画、行政契約、行政指導など
これらの性質を理解することで、
行政の活動についての理解度が全然違いますので、確認しておきましょう。
それでは、具体的に見ていきましょう。
@規制行政(侵害行政)
規制行政とは、権力を用いて国民の権利・利益を制限したり剥奪したりすることによって、
社会の秩序を保つための行政活動です。背景には、警察の観念があります。
規制行政の手段として、ある行為を命令、禁止、場合よっては実力行使をすることによります。
しかし、これらはすべて法律の根拠が必要です。
なおかつ、必要最小限にとどめておかなければなりません。
最も重要な手段は、許可制を設けることで個人の行動を管理するということです。
例えば、自動車の運転免許が必要な理由は?、と聞かれたらどう答えますか。
ここでは、誰でも運転できるようになれば交通事故が多発するのでそれを事前に防止するため、と答えるのが適切です。
私たち国民にとってマイナス要素の行政活動といえますが、安全面ではプラスとなっている活動といえるでしょう。
他に営業許可、医師免許、建築規制などが規制行政にあたります。
まとめると規制行政とは、問題の発生を未然に防止するため、私たちの行動を規制するという手段で、国民を守っているといえるでしょう。
A給付行政(授益行政)
給付行政とは、国民に一定の権利・利益を与え、公共の利益を増進させる行政活動です。
背景として、20世紀に市民生活の行政の依存性が深まり、国家の干渉を嫌う自由主義国家から積極的な国家介入を認める福祉国家へ、国家観が変容したということがあります。
よって、公共の福祉を増進するため、公平性が重視されており、国民にとってプラスの行政活動といえるでしょう。
具体的に、生活保護、水道水の給付、ゴミの処理、国公立学校における教育が給付行政にあたります。
B調達行政
調達行政とは、行政活動を行うための必要な資金、土地を調達するための行政活動です。
やはり、規制行政や給付行政などを行うためには資金が必要となります。
そこで、税金の徴収などの国民にとってマイナスの行為ではありますが、より良い公共福祉を行うための活動が、調達行政といいます。
他に宝クジも調達行政にあたります。
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