役に立つ法律の情報・実用法学-行政法、民法など、大学課程の法学

権限とは

 

行政機関の権限とは、行政機関が法律上で行うことのできる行為のことをいいます。

 

また、行政機関が権限を行使することができるのは、法律によってそれぞれ与えられた権限のみです。
例えば、諮問機関に与えられた権限は監査機関が行使することはできません。

 

つまり、行政機関は他の行政機関に与えられ権限を行使することはできない、ということです。
これを権限分配の原則といいます。

 

(例)道路交通法

 

・交通規制などの交通規制を行う権限→警察官
・違法駐車に対する処置の権限→警察署長
・自動車の運転免許を交付する権限→都道府県公安委員会

 

 

行政機関の権限の代行

 

原則、行政機関は法律に定められた権限は自ら行使しなければなりません。
しかし、例外的にその権限を他の行政機関に委ねることが認められています。

 

 

@権限の委任

 

権限の委任とは、行政機関が法律上定められた権限の一部を、他の行政機関に譲渡することです。

 

ここで委任した行政機関は、権限を失います。
ただし、権限の委任は一部についてのみ認められ、全部委任することは認められていません。

 

また、委任を受けた行政機関は自己の名と責任において行使します。さらに、委任するためには、法律の根拠が必要であることも重要です。そして、権限の委任を行う場合は、公に知らせなくてはなりません。(公示)

 

つまり、委任された以上は責任を持って仕事してくださいね。そして、委任するためには法律に従ってくださいね。ただし、権限の全部を与えてはいけません。また、そのことを世間に知らせてくださいね、ということです。

 

 

委任できるケース

 

ここで委任ができる場合は、権限のある行政機関が、その権限を行使することが困難、または不適切であることです。

 

 

A権限の代理

 

権限の代理とは、行政機関の権限の一部、または全部を他の行政機関に与えることです。

 

また、与えられた行政機関は代理者であることを外部に対して表示しなければなりません。
委任とは異なり、権限そのものは元々の行政機関にあるままです。

 

代理には、授権代理と法定代理の2種類があります。
授権代理:自らの意思によって、代理関係を生じさせること。(法律の根拠は不要)
法定代理:事故があったなど、やむを得ない場合、法律の定めによって代理関係が生じること。(法律の根拠は必要)

 

また、授権代理の場合は、権限の全部を与えることはできず、一部だけ与えることができます。
ここで、授権代理、法定代理のどちらの場合でも、権限は元々の行政機関に必ずありますので注意してください。

 

つまり、委任との違いは権限が元々の場所に残るか残らないか、です。

 

 

B専決(代決)

 

専決とは、権限のある行政機関が、補助機関に事務処理についての決定権限を与えることをいいます。

 

また、外部に対して、本来の行政機関の名と責任において権限をします。
なお、内容をあらかじめ指定された仕事を処理した場合を専決、急に要する仕事を処理する場合を代決といいます。

 

これらは、法律の根拠は必要ありません。

 

 

行政機関の権限の監督

 

行政機関の権限の監督とは、組織の統一を図るため、上級行政機関は下級行政機関に対する指揮監督の権限を有する、ということです。

 

上級行政機関、下級行政機関とは、国家機関、都道府県、市区町村などの内部関係のことをいいます。
例えば、法務省(上級)と法務局(下級)のような関係です。

 

指揮監督権の種類として、具体的に監視権、許認可権、訓令・通達・職務命令権、取消・停止権、代執行権、裁定権の6種類の権限が認められてます。

 

@監視

 

監視とは、下級行政機関の書類の検閲や事務の視察などを行い、下級行政機関から業務状況の報告書の提出を求めること。

 

 

A許認可

 

許認可とは、下級行政機関が権限を行使するときに、権限を事前にチェックするため、上級行政機関の許可・認可を受けさせること。

 

 

B訓令・通達・職務命令

 

訓令とは、上級行政機関が、下級行政機関の権限を行使するときに発する命令のことです。そして、それを書面の形式として扱うものを通達といいます。

 

たとえ、訓令が違法であっても下級行政機関は審査権を持たないため、訓令に従わなければなりません。
ただし、重大かつ明白な瑕疵(かし=間違いのこと)の場合は従わなくてもよいことがあります。

 

職務命令は、訓令と似た形式ですが、違いとして訓令は下級行政機関の意思を拘束するのに対し、職務命令は公務員を個人として拘束します。

 

 

C取消・停止

 

取消・停止とは、上級行政機関が下級行政機関の行った違法、または不当な行為を取消、停止することです。
これについて、法律の根拠が必要かどうか学説の対立があります。

 

 

D代執行

 

代執行とは、上級行政機関が下級行政機関に代わって事務を行うことをいいます。
これは、法律の根拠が必要です。

 

法律の根拠;法が定めた内容があること

 

 

E裁定

 

裁定とは、下級行政機関の相互で生じた権限の争いを上級行政機関で決定すること。

 

 

 

 
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