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憲法前文の構成

 

前文とは、法の最初に付され、その目的や精神を述べるものをいいます。
日本国憲法の日本原理は、前文に集約されています。

 

構成は、以下のようになります。
第一項:国民主権の採用を名言する文
第二項:平和主義について
第三項:国際協調主義を採用していること
第四項:民主・平和・自由への誓い

 

 

憲法前文の学説上の争い

 

前文に法規範性があるか?

 

前文には、法規範性があるのでしょうか?つまり、前文を憲法の一部として考えることができるのでしょうか?

 

通説の見解によると、法規範性を肯定するのが一般的です。つまり、前文は単なる前書きではなく、憲法の一部です。したがって、前文を改正するためには、通常の条文同様に96条の改正手続に従う必要があります。

 

また、憲法の一部とされるならば、前文が宣言する基本原理は憲法改正によっても否定することはできないことになります。つまり、前文は憲法改正に限界があることを意味します。

 

 

前文に裁判規範性があるか?

 

前文には、裁判規範性があるのでしょうか?つまり、前文を判決の際、直接の基準として判断してもよいのでしょうか?
通説の見解によると、裁判規範性はなし、とするのが一般的です。

 

なぜなら、前文の規定はあくまで抽象的な原理の宣言にとどまります。そのため、裁判基準としてそのまま使うことはできません。もっとも、前文の内容は憲法条文にそれぞれ具現化されているため、裁判所は具体性のある各条文を、判断の基準とすることができます。よって、実際の裁判での基準は、前文ではなく1条以下の各条文でするべきだと考えられています。
※ただし、各条文が裁判で適用される際、前文を条文の解釈基準として使用することは否定していません。

 

 

憲法前文

 

第一項 国民主権の採用

 

日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。

 

 

第二項 平和主義について

 

日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。

 

 

第三項 国際協調主義の採用

 

われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。

 

 

第四項 民主・自由・平和への誓い

 

日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。

 

 

 
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