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外国人の人権議論

 

基本的人権は、人として前提で存在する権利であり、国家が成立することによって与えられるものではありません。したがって、人権の保障は外国人に原則及びます。

 

しかし、その保障は日本国民と同じではありません。なぜなら、権利によっては外国人に認めることが適当でないものがあるからです。
よって、憲法上保障されている人権をそれぞれ分析して、その性質に応じて外国人にも保障されるか否か、の判断する必要があります。(性質説)

 

 

外国人人権の議論の全体構造 

 

 

 

性質説前提の人権検討

 

参政権

 

参政権とは、国民が自国家の政治に参加することができる権利です。
したがって、性質上は国家の国民にのみ認められるものとされます。もっとも、判例は国政に関する選挙の場合も地方に関する選挙権で、扱いが違います。

 

 

@国政選挙

 

公職選挙法は、国会議員の選挙権や被選挙権を、日本国民にだけ持つ限定する規定を設けています。
また、この限定は憲法に違反してません。なぜなら、国会議員は国の政治を扱うため、本来は日本と共に死ぬ覚悟で職務を遂行しなければなりません。
よって、外国人に国政選挙を認めることは妥当ではありません。

 

 

A地方参政権

 

地方参政権についても、地方議会について定める憲法93条の「住民」の定義を、日本国民に限ると捉えています。したがって、憲法は在留外国人に対して、地方公共団体の長・その議会の議員等の選挙権を保障したものではありません。

 

ただし、憲法が保障する地方自治制度の目的は、地方公共団体が住民の意思に基づいて地域をより良い場所することです。よって、在留外国人のうち永住者など一定の者に、法律によって地方公共団体の長・その議会の議員等の選挙権を与えることは憲法上禁止されてません。(最判平.7.2.28)

 

つまり、在留外国人には参政権はないが、永住外国人等の一定の要件を満たせば地方公共団体の長や議員になれます。

 

 

B政治活動の自由

 

政治活動については、外国人も日本国民と同様に保障されています。

 

ただし、日本の政治で決め事や決まったことの実施に影響を及ぼす活動など、外国人として妥当ではない活動までは保障されません。
したがって、政治活動の内容によっては、外国人が日本に在留したいと国に要求しても認められない場合があります。あくまで、在留できる地位が与えられているにすぎないからです。
よって、外国人が日本に在留し続けることができるかは、法務大臣の裁量に委ねられ、在留期間の更新が適当と認められる相当の理由があれば、日本にいることができます。(マクリーン事件)

 

つまり、外国人の政治活動自体は憲法は保障しますが、国内でしたことまでは保障はありません。

 

 

C公務就任権

 

公務就任権は、外国人に保障されるかは不明です。なぜなら、裁判所は公務員就任権の判断は曖昧にしています。
つまり、任命することをはっきり禁止としていません。

 

公務就任権:公務員になる権利

 

地方公務員法によると、一般職公務員を在留外国人(外国籍)に任命することは明記してません。ただし、条例等の定めがあれば、在留外国人でも公務員になることは禁止されないと考えられてます。
また、在留外国人だからといって、勤務条件を合理的な理由なしで、日本国民と差別的な扱いは禁止されています。言い換えると、合理的理由があれば日本国民と在留外国人と区別しても憲法14条に違反しません。

 

公務就任権の場合の日本の意図は、公権力等を行使する地方公務員の就任を、原則として日本国籍を持つものがすべきと考えてます。
したがって、この考えを合理的な理由として、裁判所は外国籍を持つ外国人が公務員なれないからといって、憲法14条に違反するものではないとしました。(東京都管理職選考事件)

 

つまり、規外国人に公務員の任命は規定としては禁止されてませんが、日本は想定してないため現実的には不可となります。

 

 

社会権

 

社会権も公務員就任権と同様に、合理的理由があれば日本国民と在留外国人と区別しても憲法14条に違反しません。
なぜなら、社会保障を行うための財源は限られます。よって、福祉的給付を行うにあたって在留外国人よりも日本国民を優先的に扱うことは、合理的な理由であるとされます。

 

つまり、社会権は自分国によって保障されるべきであり、限られた財源の下で日本に保障されることを期待すべきではありません。しかし、外国人に社会権を保障することは禁止してないため、法律によって機会的に保障することができると考えられます。

 

 

自由権

 

入国・在留の自由

 

自国の安全や秩序を保つために、誰を入国させるかは国の裁量によります。したがって、国家は自由裁量を有するため、入国の自由が外国人に保障されないことは当然となります。

 

また、在留する権利も入国の自由の継続と考えられます。よって、在留の拒否も国の自由裁量に委ねられるため、外国人は日本に在留する権利はありません。(マクリーン事件)

 

ちなみに、再入国する自由も憲法で保障されません。なぜなら、外国人へ憲法上入国の自由を認めていないことから、外国へ一時旅行する自由も保障されないからです。(森川キャサリーン事件)

 

再入国:日本で在留資格を有する外国人が、その在留期間満了前に、再度日本に入国すること

 

 

出国の自由

 

憲法22条は「何人も、外国に移住し、又は国籍離脱する自由を侵されない」と規定しています。ここにいう外国移住の自由は、その権利の性質上外国人に限って保障しないと理由はありません。

 

つまり、外国人でも出国の自由は妨げられるものではなく、憲法で保障されます。
また、外国での生活がメインである人には、特に強く出国の自由を保障する必要があります。

 

 

 
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