行政罰とは
行政罰とは、行政上の義務違反者に対して制裁として刑罰などを科すことによる威嚇効果によって、義務の履行を図ることを目的とする罰のことです。
行政罰は過去の義務違反に対する制裁が目的ですので、1つの行為に対して繰り返し科すことはできません。これを二重処罰の禁止といいます。
よって、同じ「罰」とついている前項の執行罰と行政罰の違いが明らかです。
つまり、執行罰は将来の義務の履行を確保することが目的なので罰を繰り返し科すことができます。
これに対して、行政罰は過去の違反に対して制裁のためなので罰を繰り返し科すことができません。
その他罰の違い
刑事罰
刑事罰とは、@処罰の理由、A誰を処罰するのか?、B故意犯処罰の原則、という3つ点で異なります。
処罰の理由
刑事罰は、反社会的・反道義的行為をした場合に科されます。(殺人など)
行政罰は、行政法令や行政行為によって課された義務に違反すれば反社会的・反道義的であるかどうかを問わずに科されます。
つまり、刑事罰は自然社会に存在する道徳に背くかどうかで処罰を決めます。
それに対して、行政罰は法的違反という形式だけで処罰を決めることが大きな違いです。
まとめると、
刑事罰を実質的・自然的刑事犯
行政罰を形式的・法定的行政犯
とすることができます。
誰を処罰するのか?
刑事罰は自然にのみ科せられるとされます。
一方で行政罰は、自然人だけでなく法人までも処罰することができるとされています。
また、両罰規定により違反者以外の者も処罰される場合があります。
故意犯処罰の原則
刑事罰を定めた刑法は、処罰できる行為は過失の場合例外規定がない限り、故意のある場合に限られるのが原則です。
これが故意犯処罰の原則です。
これに対して行政罰では、故意犯処罰の原則が厳密や適用されず、過失があれば処罰をすることが認められます。
懲戒罰
行政罰は、一般権力関係において一般統治権に基づいて科されます。
それに対して懲戒罰は、特別権力関係において秩序を乱した者に科されます。
行政強制との違い
行政強制と行政罰との違う点は、行政強制の場合は将来に向けて行政上の義務の履行を確保することを直接的な目的とします。
これに対して、行政罰は過去の義務違反に対する行為の制裁を直接的な目的とします。これは、間接的に将来の義務の履行を強制的に実現させるともいえます。
よって、行政強制と行政罰の違いは将来に向けての義務の履行を、直接の目的とするか、(過去の義務違反とすることによって)間接的に義務の履行を実現するかによります。
行政罰との併科
併科とは、1つの行為に複数の罰を科すことをいいます。
行政罰は、@行政上の行政強制、A執行罰、B懲戒罰、などと併科することができます。
なぜ併科できるかというと、いずれも直接の目的、関係性が異なるため、併用することが認められるとされます。
なお、上記の3つ以外にも異なる手段で目的を図るのならば併科することはできる、とされます。
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