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行政行為の分類

 

行政行為は、法的効力の発生原因の違いにより次の2つに分類されます。

 

@法律行為的行政行為
A準法律行為的行政行為

 

法律行為的行政行為と準法律行為的行政行為には、決定的な違いがあります。

 

それは、行政庁の意思表示が必要であるかどうかです。
これらは、@法律行為的行政行為は意思表示が必要、A準法律行為的行政行為は意思表示が不要となります。

 

つまり、@法律行為的行政行為は行政庁の意思表示によって効果が発生するといえます。
もし行政庁の意思表示が必要な行為(外国人の帰化など)ならば、行政庁の判断によって行為の効果が決定する(行政裁量)、といえます。

 

ちなみに、意思表示の意思とは、〜したい・しろなどの目的を内心で思う願望です。
そして、表示とは相手に表すこと。
つまり、意思表示は、自分の目的を相手に伝えること、になります。

 

それでは、A準法律行為的行政行為は何かといいますと、法律の定めによって効果を発生させることです。決して行政庁が、自ら望んで行為の効果を発生させるわけではありません。
よって、法律の規定に満たしていない行為(選挙人名簿登録など)は、行政庁の判断で行為の効果を発生させるわけにはいけない、といえます

 

まとめると、@法律行為的行政行為は行政庁の意思表示によって効果が発生、A準法律行為的行政行為は行政庁の意思表示は不要で、法律の定めるところにより効果が発生する行為です。

 

法律行為的行政行為、準法律行為的行政行為の概念 

 

 

法律行為的行政行為と準法律行為的行政行為には、それぞれ具体的な命令があります。
どういうときに、当てはまるのか確認しながら理解していくことが重要です。

 

 

法律行為的行政行為

 

 

命令的行為

 

命令的行為とは、国民がうまれながらにして持っている自由を制限して、一定の行為をする義務を命じたり、その制限を解除したりする行為のことをいいます。
もし命令に背いた場合、その人は一般的に強制執行や行政罰を与えられることが多いです。
しかし、命令的行為に違反しても法律行為自体は有効として扱われます。

 

例えば、無許可で食料販売で営業している人がいたとしても、その食料販売で契約したことは有効である、ということです。
これらは、具体的に、下命・禁止(義務賦課行為)、許可・免除(義務解除行為)にさらに分けられます。

 

 

義務賦課行為

 

下命

 

下命とは、国民に対して一定の作為の義務を命ずる行政行為です。
例えば、違法建築物の除去命令、租税や負担金の賦課処分、健康診断の受診命令、予防注射の実地などは下命にあたるとされています。

 

下命イメージとして、「〜しろ」と義務づけるかんじです。

 

 

禁止

 

そして、禁止とは国民に対して一定の不作為の義務を命じる行政行為です。
例えば、営業活動の停止命令、道路通行の禁止、違法建築物の使用禁止が禁止にあたるとされています。

 

禁止のイメージとして、「〜するな」と義務づけるかんじです。

 

 

義務解除行為

 

許可

 

許可とは、すでに法令によって定められている一般的禁止の義務を解除する行政行為です。

 

例えば、自動車の運転免許、医師免許、飲食店の営業許可、風俗営業の許可、火薬輸入の許可などは許可にあたるとされています。
また、自動車の車体検査などの「物」に対しての許可は原則として譲渡、相続の対象となります。
しかし一方で、自動車運転免許などのような「人」に対しての許可は原則として譲渡、相続の対象とすることはできません。

 

一つ注意点として、許可を受けたいとして行政庁に申請したとしても、必要な要件を満たしていても行政庁の判断によって不許可が出される場合があります。
許可のイメージとして、「〜するな」という義務を解除するかんじです。
「〜してもよい」ともなります。

 

 

免除

 

免除とは、法令などによって課されている作為の義務を解除する行政行為です。
例えば、児童の就学義務の免除、納税義務の免除などは免除にあたるとされています。

 

 

形成的行為

 

形成的行為とは、国民に対して、国民が本来持っていない特殊な権利や法的地位を与えたり、奪ったりする行為のことをいいます。
また、これらの行為が違反する場合は無効とされます。

 

具体的に、鉄道会社が料金を値上げするとします。
この場合、きちんと国土交通大臣の認可を受けていない値段の変更は、無効となります。
なぜなら、鉄道などの公共施設を利用することができる=特定の地位を与えられる、と考えてください。

 

つまり形成的行為とは、公共施設の利用などの特定の地位を与える行為に、違反するような行為(認可を受けない値上げ)は無効とされるということです。
これらは具体的に、認可、特許、代理があります。

 

 

認可

 

認可とは、国民の法行為を補充して、その法律上の効力を完成させる行為のことです。

 

例えば、農地の売買契約の許可、公企業の料金の値上げの認可、銀行合併の認可などは認可にあたるとされています。

 

ようは、認可されるのに必要な要件を満たしていれば、行政庁は必ず認可しなければならない、ということです。
また、違反した場合の認可は無効となります。

 

許可と認可の違いがわからなくなる方は、この要素を見ることである程度区別することができます。
つまり、許可は行政庁の判断次第(一般企業系)、認可は必要事項を満たしていれば必ず認可がもらえる(公企業系)という認識です。

 

 

特許

 

特許とは、国民が本来持っていない特殊な権利などを特定の人に与える行為のことです。

 

例えば、バスなどの運送事業の免許、公務員の任命などが特許にあたるとされています。

 

そして、特許と同じような行為として剥奪、変更もあります。
それぞれ、特許によって与えられた権利を奪う、変更する行為です。
例えば、公務員の罷免が剥奪にあたるとされています。

 

 

代理

 

代理とは、本来国民がなすべき行為を行政機関が代わって行い、その行為は本来国民が行ったのと同じ効果を生じさせる行為のことです。
例えば、土地収用裁決などの当事者間の協議が整わない場合の行政庁の裁定、主務大臣による特殊法人の役員の選任は代理にあたるとされています。

 

行政行為の分類

 

 

準法律行為的行政行為

 

準法律行為的行政行為には、確認、公証、通知、受理があります。

 

 

確認

 

確認とは、特定の事実または法律関係が、存在しているか否かについて公に認めて外部に表示する行為です。
例えば、契約が正しく成立して存在することになるか、不成立で存在していないことになるかをはっきりさせて周りに知らせることです。

 

つまり、確認は法律関係を確定する効力があります。
他に、審査請求の裁決、当選人の決定、発明の特許、所得税の決定などは確認にあたるとされています。

 

 

公証

 

公証とは、特定の事実または法律関係の存在を公に証明する行為です。
例えば、不動産登記の証明書はそれ自体が存在関係の証明になり将来的に有効である、ということです。

 

つまり、法律により法律効果の発生が予定されている行為であるともいえます。
他に、選挙人名簿の登録などは公証にあたるとされています。

 

 

通知

 

通知とは、特定の事実または行政庁の意思を、特定人または不特定多数人に対して表示する行為です。
例えば、特許出願の公告、租税納付の督促、帰化の告示などは通知にあたるとされています。

 

 

受理

 

受理とは、届出・申請などの申出を適法(有効)なものとして受け付ける行為です。
例えば、婚姻届の受理、不服申し立ての受理などは受理にあたるとされています。

 

 
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