附款とは
附款とは、行政行為の効果を制限したり、特別な義務を課したりするため、主たる意思表示(自動車運転免許など)に付される行政庁の従たる意思表示(x月y日まで有効など)をいいます。
もう少し具体的に説明するため、自動車の運転免許交付を例に挙げます。
道路交通法88条1項によると、大型免許は二十一歳、中型は二十歳…原付免許にあっては十六歳に、それぞれ満たない者に対して、第一種免許または第二種免許を与えない、とされています。
この法は初めから「〜満たない者に免許を与えない」という附款がついてます。
よって、最初から法律で附款の定めがあるものは行政行為の附款をつけることができません。(法定附款といいます)
次に道路交通法91条によると、公安委員会は、道路における危険を防止し、その他交通の安全を図るため必要があると認めるときは、必要な限度において…必要な条件を付し、及び変更することができる、とされています。
よって、条件をつけて許可を与える行政行為ができる、ということは行政行為の附款といえます。
ちなみに、行政行為の附款は行政裁量の一種です。
以上のような附款がある理由は、もし附款がなく行政行為が適法であるならば、それを実行するか拒否するかの二者択一的な判断になります。
しかし附款をつけることができれば、さらなる柔軟な活動ができる行政の運営を可能にすることができます。
附款の種類
附款には、@期限、A条件、B負担、C撤回権の留保、D法律効果の一部除外、と5つの種類があります。
@期限
期限とは、行政行為の効力の発生または消滅が確実な、将来の時期を示す意思表示です。
例えば、「x月y日から」河川の占用を許可する、のようなものです。
また、事実の発生により、効力が発生するものを始期、効果が消滅するものを終期といいます。
A条件
条件とは、行政行為の効力の発生または消滅を、将来不確定な事実に依存した意思表示です。
例えば、「道路工事が始まったら」道路の通行を禁止する、のようなものです。
つまり、到来時期が不確定な期限といえます。
また、事実の発生によって、効果が生じるものを停止条件(道路工事の開始日から通行止めにするなど)、効果が消滅するものを解除条件(橋が完成するまで道路を通行止めにするなど)といいます。
B負担
負担とは、許可や特許などの授益的行政行為に附款される意思表示で、国民に一定の義務を命じる意思表示です。
例えば、道路の占用許可をとるために「占用料の納付を命ずる」、ような義務を課されることです。
もし、負担によって特別の義務を命じられたとしても、義務に従わないからといって行政行為の効力が失われるわけではありません。
例えば、占用料を納付しなくても、すでに出てる占用許可の効力が当然に失わずにそのまま発生します。
しかしこの場合、行政庁は負担の履行を強制、占用許可を撤回するなど、改めて別の処置を講じる必要があります。
負担のポイントとして、行政行為自体の効力はすでに完全に発生しています。
C撤回権の留保
撤回権の留保とは、行政行為をするにあたって、一定の理由がある場合に撤回する(取り消す)権利を留保する旨を示す意思表示です。
ただし、撤回権の留保が附款されている場合であっても、行政庁は無制限に行政行為を撤回することはできません。
D法律効果の一部除外
行政行為をするにあたって、法令が一般に行為に付した効果を発生させないこと、とする意思表示です。
例えば、公務員に出張を命じたが旅費は自己負担とする、のようなものです。
附款の限界
附款は、原則として法律で附款を付すことが認められている場合(法定附款)、または行政行為の内容を決定するにあたって行政庁に裁量権が認められている場合は法律の範囲内で付すことが認められています。
しかし、無制限に認められているわけではありません。
例えば、デモ行進の許可について「ジグザグ行進をしないこと」のような附款は認められますが、「駆け足をしないこと」などのような附款は認められていません。
なぜなら、附款を付すことによって目的を達成するためには、附款は必要最小限でなければならないからです。
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