役に立つ法律の情報・実用法学-行政法、民法など、大学課程の法学

行政調査とは

 

行政調査とは、行政機関が行政作用を公正に行うための活動。
また、行政目的を達成するために、情報等を収集する活動のことをいいます。

 

例えば、脱税の疑いのある事業者の事務所などに対して立ち入り検査をする、などが行政調査にあたります。
ただし、行政強制とは違い、行政調査において相手方が抵抗した場合は当然に実力行使によって抵抗を排除することが認められません。

 

つまり、行政調査は行政目的を実現するために、実力の行使をする権限を持っています。
この、行政調査は憲法上の要請として当然に事前通知等が必要とされるものではありません。
よって、予告なく行政調査が行われます。

 

しかし、相手方が正当な理由なく行政調査を受けることを拒否すれば実力の行使は原則認められません。また、行政調査を行う場合は可能な限り相手方に負担をかけない方法でしなければなりません。

 

 

行政調査の種類

 

行政調査には、@任意調査、A間接強制調査、B直接強制調査、の3種類があります。

 

 

@任意調査

 

任意調査とは、調査を受ける者の自由意思を尊重するため、事前の任意の協力のもと行われます。
この行政調査は、国民の協力によって行われるため、法律の根拠は必要ありません。

 

 

A間接強制調査

 

間接強制調査は、物理的な強制を直接的に行使することはできません。

 

しかし、調査を拒否した場合には罰則を科すような事後制裁によって行われます。
(例)税務調査の拒否に対する罰則の適用など

 

この行政調査は、制裁が行われるため、法律の根拠が必要です。

 

 

B直接強制調査

 

直接強制調査とは、調査を拒否する私人の意思に反して、例外的に物理的強制等、実力の行使を使って行われます。
また、行政調査は事前通知を必要としないため、即時強制の1つであるともいえます。

 

この行政調査は、実力の行使を行うため、法律の根拠が必要です。

 

ちなみに、物理的な実力の行使によって行政調査を行う場合には令状主義が適用されます。
よって、裁判所の令状がなければ直接強制調査をすることができません。

 

 

実力の行使

事後制裁

法律の根拠

任意調査

×

×

不要

間接強制調査

×

必要

直接強制調査

なし

必要

 

 

行政調査における実力行使

 

 

任意調査

 

任意調査に関して判例があります。
・大阪覚せい剤事件(裁判昭53.9.7)

 

これは、警察官の職務質問に伴う所持品検査についての判例です。

 

具体的にいうと、警察官Aが市民Xに職務質問を行いました。
そして、Xの上着を上から触り違和感があったため、Aは中身の提示を求めました。
しかし、Xは応じなかったため、Aが任意なしにポケット内を調査しました。
すると、覚せい剤が出たため、Xは現行犯逮捕されました。

 

Xの裁判において問題となったのは、やはりAの行為です。
なぜなら、行政調査を任意なく無理に行えば、違法な方法で証拠(覚せい剤)を収集した、ということになるからです。

 

裁判所の判断によると、「Xの覚せい剤の所持の容疑が濃厚で、所持品を検査する必要性ないし緊急性はこれを是認しうるが、Xの承諾なく、ポケットに手を差入れて所持品を取出し、検査した行為は、一般にプライバシー侵害の程度の高い行為である。」としました。

 

つまり警察官の職務質問による所持品検査は、緊急事態等でない限り、任意の協力なしで強制的に所持品検査を行うのは、違法であるとしました。
すなわち、所持品検査に任意の協力がない場合、強制でなければ認められるといえます。

 

このような認められた判例として、次のようなものがあります。
・米子銀行強盗事件(裁判昭53.6.20)

 

他に自動車検問についても、任意の協力であれば行政調査を認めるとされています。
・飲酒運転一斉検問事件(裁判昭55.9.22)

 

 

直接強制調査

 

直接強制調査について以下の判例があります。
・川崎民商事件(裁判昭47.11.22)

 

簡単に説明すると、憲法35条の(捜索での)令状主義を行政調査に適用するかしないかの事件となっています。
この事件によって令状主義に適用余地がある、ということがわかります。

 

しかし、この事件では適用とされません。

 

 

 
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