役に立つ法律の情報・実用法学-行政法、民法など、大学課程の法学

行政契約とは

 

行政契約とは、国や地方公共団体等といった行政主体が対等の立場の当事者となって、私人または他の行政主体との間に結ぶ契約のことです。

 

行政契約は、契約によって権利義務関係が発生するため、法的効果となります。
この点は、行政行為と共通します。

 

しかし、契約である以上、お互いの自由意思に基づく申込みと承諾の合致があって初めて成立する点は区別点とされます。
これは、いわゆる非権力的な行政活動の1つといえます。

 

行政行為:行政庁の行為
行政契約:行政主体の行為

 

行政契約には、例えば、文房具屋から鉛筆を購入する物品の納入契約、公共土木事業の請負契約、私人の所有地を道路用地として提供してもらう公用負担契約、廃棄物処理についての民間業者への委託契約などがあります。

 

 

行政契約の分類

 

行政契約には、私法上の契約、公法的上の契約、の2つにおおまかにわけることができます。

 

例えば、行政が文房具屋から鉛筆を購入する物品納入契約は、一般的に私人と同じ立場で取引するため、私法(民法等)の規定が適用されます。
よって、私法上の契約といえます、

 

これに対して、私人の所有地を道路用地として提供してもらう公共負担契約は、公益を実現するための契約なので私法の規定は適用されません。
よって、公法上の契約といえます。

 

 

私法上の契約

 

私法上の契約とは、行政と私人との間の契約で、行政が私人と同じ立場で契約を結ぶことをいいます。

 

私人と同じ立場で取引するため、私法の規定が適用されます。
また、訴訟手続も民事訴訟によって行われます。

 

私法上の契約は、さらに、給付行政における契約、行政の手段調達のための契約、財産管理のための契約に分類することができます。

 

 

給付行政における契約

 

給付行政における契約とは、いわゆる行政サービスの提供のための契約といえます。
具体的に、公共施設(公営住宅、公民館など)の利用契約、公共企業(上下水道、電気)の利用契約、補助金交付契約などがあります。

 

下段に給付行政の契約特徴を説明してます。

 

 

行政の手段調達のための契約

 

行政の手段調達のための契約とは、行政を行うにあたって物的手段を準備する行為のため、いわゆる準備行政といえます。
具体的に、政府契約(物品納入契約、公共事業の請負契約)、公共用地買収のための契約、公務員の雇用契約などがあります。

 

ちなみに、政府契約や公共用地買収のための契約は物的手段の調達を目的とします。
反対に、公務員の雇用契約は人的手段の調達を目的とします。

 

 

財産管理のための契約

 

具体的に、国有財産の売り払いや貸し付けのための契約などがあります。

 

 

公法上の契約

 

公法上の契約とは、行政主体が公法上の手段として契約を結ぶ行為です。公益を目的とします。公益を実現するための契約なので私法規定はありません
また、公益目的という特徴により、訴訟手続は行政事件訴訟(当事者訴訟)によって行われます。

 

公法上の契約は、さらに、規制行政における契約、行政主体間での契約に分類することができます。

 

 

規制行政における契約

 

規制行政は、国民の権利・自由を制限する行政活動のため、行政行為の形式によって行われることが多いです。
しかし、法律の規定が不十分な場合、行政契約の締結によって権利・自由に対する民主的コントロールをすることがあります。
例として、公害防止協定があります。

 

 

行政主体間での契約

 

国と地方公共団体との間や、地方公共団体間で締結される契約のことです。
例えば、地方公共団体間の事務委託や境界地の道路や河川の管理費用の分担があります。

 

ちなみに、事務委託契約において、委託した地方公共団体は権限を持たなくなるため、法律上の権限が変動したことになります。
よって、法律の根拠が必要となります。

 

 

給付行政における行政契約の特徴

 

給付行政における契約は、水道に利用に関するものや生活保護の決定など、いわゆる国民側から結びたい契約です。

 

 

経緯

 

かつて、給付行政は権力的な行為形式によって用いられることが多かったです。(国の補助金交付決定など)
しかし、現代の行政において給付行政は、非権力的な形式による行政契約によって、行政主体と国民が対等な当事者として法律関係を作ることが多くなりました。(水道法による給水契約など)

 

 

特徴

 

給付行政における行政契約は、原則として私法の規定が適用されます。

 

ただし、一方の当事者が行政主体である以上は、私人間同士で結ぶ契約と同視することはできません。
よって、公益と関わりを持つため、私法の規定だけでなく法律・条例による規定が設けられている場合もあり、さらには憲法の諸原則による拘束も受けます。

 

そのため、給付行政における行政契約には以下の特徴を持ちます。

 

 

附合契約

 

附合契約とは、あらかじめ決められている契約内容を、機械的に従って契約を結ぶことです。

 

 

なぜ、附合契約なのか?

 

行政サービスの提供のための契約は、国民の生活に関わるものが多いです。
そのため、利用者間での差別的な取扱いの禁止や利用者の見極めの公正、が必要となります。

 

つまり、国民の生活に関わる給付行政における行政契約は、憲法14条の平等原則に基づかなければならないのです。
そのため、契約の条件は、法令や条例などで客観的・一般的に定められます。

 

そして、この条件に従って契約を結ぶことは、行政主体と国民との契約に公正さが確保されることになるため、附合契約で締結しなければならない、ということです。

 

 

行政サービスの提供義務

 

法律が行政サービス提供の義務、および行政サービスの不当な拒否の禁止を定めている場合があります。

 

例えば、水道法15条によれば、役務・便益の提供にあたって、行政庁が正当な理由なしに契約締結を拒むことは許されない、としています。
また、公営住宅の貸与のような供給数が限られる場合、先着順や当選などのような客観的な選考方法によって契約の相手方を選ばなければなりません。

 

つまり、行政サービスを提供する際、行政は契約の相手方を自由に選べません。
もし選ぶのであれば、客観的方法によって選ばなければなりません。

 

 

契約解除・条件の変更の制限

 

給付行政は、継続的かつ安定的に行わなければなりません。

 

よって、理由なしに一方的に行政庁側から契約を解除することはできません。
また、変更する必要がある場合は合理的な範囲内で契約条件を変更しなければなりません。

 

 

 
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