役に立つ法律の情報・実用法学-行政法、民法など、大学課程の法学

取消しとは

 

取消しとは、行政行為が成立したときから違法、または不当であった判明したときに、それを理由にして行政行為の効力を初めからなかったことにする意思表示をすることをいいます。
また、行政庁の判断で行う取消しを職権取消、私人(一般人)の申し立てにより行われる取消しを争訟取消、といいます。

 

取消権限を持つ組織は、職権取消の場合は正当な権限を持つ行政庁(処分庁、上級行政庁、裁判所など処分を行った庁に限られない)、争訟取消の場合は正当な権限を持つ行政庁の他に裁判所も取消権限を持っています。
ただし、裁判所は取消訴訟によって提起された場合のみです。

 

ここでは、職権取消について詳しく解説します。
争訟取消は、行政救済法で解説します。

 

 

職権取消の根拠

 

法律による行政の原理が根拠となります。

 

なぜなら、行政行為に瑕疵があった場合、それが違法な瑕疵ならば法律による行政の原理に違反した状態が続いていることになります。
また、不当な瑕疵であれば行政目的に違反する状態が続いていることになります。

 

このような場合、瑕疵はできるだけ速めに取り除くべきであるため、職権取消は法律の根拠は必要とされません。
ただし、行政庁が職権取消を自由に行うことが認められたわけではありません。
きちんと、法律による行政の原理と国民の利益や信頼、公益の保護とのバランスを考えながら行う必要があります。

 

職権取消には、さらに相手に権利利益を与える授益的行政行為、相手の権利利益を侵害する侵害的行政行為を取消すか、によって考えがわかれます。
(授益的行政行為の例)建築確認、営業許可
(侵害的行政行為の例)課税処分

 

取消しの概念 

 

 

授益的行政行為の職権取消

 

授益的行政行為を取消すことは、相手方に対して大きな不利益を与える可能性があります。
例えば、営業許可が出た後にコツコツと飲食店を営業するための準備してたのに、営業許可が突然取消されたら大損害ですよね。

 

よって、授益的行政行為の職権取消は制限される必要性が大きいことが特徴です。
この授益的行政行為には2つの学説があります。

 

 

職権取消否認説

 

職権取消否認説とは、行政行為の成立に相手方の不正行為が関わっているような場合を除いて、授益的行政行為の職権取消は原則として許されない、という説です。

 

つまり、相手方の利益を犠牲にする以上に公益上の必要、がある場合にのみ職権取消を認める、ということです。
しかし、これには相手方の利益や信頼を重視するあまり、法律による行政の原理や平等原則を軽んじているという批判があります。

 

 

職権取消肯定説

 

職権取消肯定説とは、法律による行政の原理から生じる違法状態をなくすための職権取消の必要性と、相手方の利益の保護の必要性の両方を考慮して職権取消をすることができるかを判断します。

 

つまり、以下の4つを比べて判断します。
@違法の程度
A相手方に与える不利益の程度(職権取消を行う時期)
B不利益を緩和する措置の有無(金銭的補償など)
C第三者に与える不利益の程度

 

 

侵害的行政行為の職権取消

 

侵害的行政行為を取消すことは、相手方にとって不利益ではありません。
例えば、課税処分を取消すことは税金を免除されることですから悪い話ではありません。

 

よって、原則として侵害的行政行為の職権取消は自由に取消すことが認められてることが特徴です。

 

 

取消しの効力

 

行政庁や裁判所が取消しをした場合、その効力は行政行為が成立したときまでさかのぼり、行政行為がそもそも最初からなかったことになります。(遡及効という)

 

ただし、授益的行政行為を職権取消する場合は相手方にとって不利益となりますので、遡及効を認めるかどうかは、それぞれの事案の事情を考慮して決めるべき、とされています。
(例)社会保障の給付

 

 
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