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行政罰の種類

 

行政罰には、刑法上に刑名として定められている刑罰(懲役・禁錮・罰則・拘留・科料)を科す「行政刑罰」と、刑法上に刑名として定められていない金銭的制裁(過料など)を科す「行政上の秩序罰」があります。

 

行政罰の種類 

 

 

行政刑罰

 

行政刑罰とは、行政上の義務違反に対して刑法上に刑名のある刑罰を科すものをいいます。
例えば、無免許運転をした者に対して、道路交通法117条に基づき「一年以下の懲役又は三十万以下の罰金に処す」のようなものです。

 

 

法律の根拠

 

行政刑罰は罪刑法定主義に基づかなければなりません。
よって、行政刑罰を科すには法律の根拠が必要です。

 

また、一定の場合には条例で行政刑罰を科すこともできます。(地方自治法で詳しくします)

 

罪刑法定主義:ある行為を犯罪として処罰するためには、立法府が制定する法令において犯罪とされる行為の内容、およびそれに対して科される刑罰を、あらかじめ明確に規定しておかなければならないとする原則。

 

 

行政刑罰の手続

 

行政刑罰は、刑事訴訟法の規定によって、検察官の基礎に基づいて裁判所により科されます。
つまり、行政刑罰を科すのは行政の役割ではない、ということです。

 

よって、国民が行政刑罰に対して不服がある場合には取消訴訟ではなく、刑事手続によって無罪を主張する必要があります。

 

 

両罰規定

 

行政刑罰には、違反行為者だけでなくその使用者などにも刑罰を科す両罰規定が適用される場合があります。

 

例えば、道路交通法123条は法人の代表者または法人や自然人などが、法人または人の業務に関して、酒に酔った状態で自動車を運転することを命じ、または容認した場合、「行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑又は科料刑を科する」とされます。

 

 

非刑罰的処理(ダイバージョン)

 

犯罪に対し、すへ?てを起訴することは困難となります。
また、刑罰を受けるまでもないような軽い違反者もいます。

 

このような者に対して、刑罰の手続の簡素化などを目的として、刑罰以外の措置をとることがあります。
これを、「非刑罰的処理」(ダイバージョン)といいます。

 

例えば非刑罰的処理(タ?イハ?ーシ?ョン)を制度化した例として、間接国税、国税犯則取締法の通告処分制度、道路交通法上の反則金制度か?あります。
次の反則金制度の項目でダイバージョンと絡めて詳しく説明します。

 

反則金制度

 

反則金制度とは簡単にいうと、軽い違反をした者は行政庁によって罰金される、ということです。

 

それでは「罰金」なのに、どうして行政庁に認められるのでしょうか?
本来、「罰金」は刑法上の手続によって科されるはずです。

 

例えば、道路交通法上の反則金制度を例に挙げます。毎日において、駐車違反などの道路交通法上の違反が非常に多く発生します。よって、すべてについて起訴を提起して刑罰を科すことは困難、そして手間もかかります。

 

そこで、行政庁である警視総監や警察本部長に反則金制度として「罰金」が認められるとしました。
これは行政庁が反則金の納付を通告することによって起こります。もし、期限内に反則金を納付した場合には公訴(刑事裁判を求める)が提起されずに、これ以上違法について追及されません。しかし、期限内に納付をしなかった場合には刑事手続に移行し、検察官が公訴を提起すれば刑事裁判が進行します。

 

つまり、反則金制度とは、司法を円滑にするために行政庁が「罰金」をすることが認められ、もし期限内に反則金を納付しなければ司法的制裁を受ける、ということです。

 

 

行政上の秩序罰

 

行政上の秩序罰とは、行政上の義務違反ではありますが、直接的に社会的法益を侵害し、国民の生活に悪影響をもたらさない軽い違反行為(通知義務違反など)に対して科せられる金銭的制裁のことです。
この科される金銭的制裁は、一般的には過料と呼ばれます。

 

例えば、正当な理由なく住民基本台帳法上の届出をしない者について、住民基本台帳法53条2項は「五万円以下の過料に処する」とされます。

 

つまり、行政上の秩序罰とは、社会的非難が軽い違反行為の場合に過料として制裁を受ける、ということです。
ちなみに、法律の他に地方公共団体の条例や長の規定においても定めることができます。(地方自治法14条3項、15条2項)

 

 

法律の根拠

 

行政上の秩序罰を科す場合にも、法律の根拠は必要です。

 

 

行政上の秩序罰の手続

 

行政上の秩序罰には、過料による金銭的制裁のため、刑法・刑事訴訟法は適用されません。

 

法律違反に対する過料は、原則非訟事件手続法の定めによって裁判所が科します。そして、条例や規則違反に対する過料は、地方自治法の定めによって普通地方公共団体の長が行政行為として科します。

 

 

行政刑罰

秩序罰

罰の種類

懲役・禁錮・罰則・拘留・科料

過料など

処罰行為

行政上の義務違反

軽い違反行為

手続

刑事訴訟法の規定により、裁判所が科す

地方自治法の規定により課す

刑法の適用

特別の場合を除き、適用される

適用されない

法律の根拠

必要

必要

 

 

その他の罰

 

行政刑罰や秩序罰以外の制裁として、@授益的行政行為の撤回、A公表、B給付拒否、などがあります。

 

 

@授益的行政行為の撤回

 

許可や認可等の取消しのことです。
例えば、運転免許の取消しや営業許可の取消しなどがあります。

 

 

A公表

 

ここでの公表とは、行政指導に対する不履行などがあった場合に、義務者の氏名や法人の名称等を公表することをいいます。

 

 

B給付拒否

 

給付拒否とは、違法行為を行った者や行政指導等に従わない者に対して、行政機関が制裁として水道・電気・ガス等の行政サービスの給付を拒否することです。

 

 

 
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