役に立つ法律の情報・実用法学-行政法、民法など、大学課程の法学

行政計画とは

 

行政計画とは、行政機関が行政活動について定める計画、または計画を定める行為のことを指します。

 

現代の行政は、ただ単純に法律に従って行動するだけでは役割不足です。
すなわち、計画を定めることによって具体的な目標を設定し、その実現に向けて長期的な行政活動をする必要があります。

 

そこで、行政には、円滑で矛盾のない行政活動が合理的に行われるように、将来に向かって長期的・継続的な視点から計画を立てる必要があります。
これが「行政計画」となります。

 

 

行政計画を定めるために、目標設定性+手段総合性、が必要です。

 

目標設定性とは、目標の設定のことをいいます。
例えば、X市とY市の間に国道を建設する、といった目標の設定です。
手段総合性とは、手段・方法の設定のことをいいます。
例えば、2005年までに用地を任意買収または収用により取得する、2012年までに道路工事を完成させて供用を開始する、といった手段の設定です。

 

ちなみに、行政計画は非権力的行政行為です。

 

 

行政計画の種類

 

 

長期計画・中期計画・短期計画

 

計画が、時間的にどの程度先のことまで定めるかによる区別。

 

 

全国計画・地域計画

 

計画の定める地域的範囲による区別。

 

 

経済計画・土地利用計画など

 

計画の対象とする分野による区別。
他に、財政計画、防衛計画、道路建設計画、住宅建設計画、医療計画、福祉計画などがあります。

 

 

基本計画・実施計画

 

計画の段階による区別。

 

基本計画は、全般的・基本的事項を定める計画です。
実施計画は、施策を具体的に実現するための計画です。

 

例えば、地方公共団体が定める基本構想が基本計画です。
そして、この計画を実施するための道路建設計画が実施計画となります。

 

 

法定計画・事実上の計画

 

計画についての法律の根拠の有無による区別。

 

法定計画は、法定の根拠が必要です。
事実上の計画は、法律の根拠が不要です。

 

例えば、政府が定める環境基本計画や地方公共団体が定める公害防止計画は、環境基本法に根拠のある法定計画となります。
そして、環境庁が定めていた環境保全長期構想は、法律の根拠がないため事実上の計画となります。

 

 

拘束的計画・非拘束的計画

 

国民に対して法的拘束力を持つか否かによる区別。
なお、国民の権利行使の制限のためには法律の根拠が必要です。すなわち、拘束的計画は必ず法定計画であり、事実上の計画は非拘束的計画となります。

 

よって、拘束的計画は国民の権利利益を制限するため、法律の根拠が必要です。
それに対して、国民に対して法的拘束力を持たない非拘束的計画は、一般的に法律の根拠は不要です。

 

 

行政計画の手続

 

行政計画を作る際、手続を定める一般法はありません。
よって、行政計画は、個別の法律・条例に基づいて定められています。

 

具体的に、以下のようなものがあります。
・意見書の提出や公聴会(例)都市計画法16条
・審議会への諮問(例)国土形成計画法6条5項、国土利用計画法5条3項、都市計画法18条
・議会の議決、承認(例)国土利用法7条3項
・地方公共団体の意見を聞く(例)国土利用計画法5条3項

 

 

行政計画と裁量

 

行政計画を作る際、行政機関には大きな裁量の余地が認められるのが一般的です。(計画裁量)
なお行政機関の裁量処分は、裁量が目的と異なる(濫用)場合に限り、取り消すことができます。

 

計画裁量の判例として以下のようなものがあります。
・小田急訴訟(裁判平18.11.2)

 

裁判所によれば、行政計画の決定・変更は、行政庁の広範な裁量が認められます。
しかし、重要な事実を欠く場合や内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠く場合は、裁量権の逸脱又は濫用により違法となります。

 

 

行政計画の損害賠償

 

行政計画の変更によって、行政に協力していた私人に金銭的なダメージを与えることがあります。
この場合、協力している私人に一方的に泣き寝入りさせるわけにはいきません。

 

しかし、計画には変更が伴いますため変更しないわけにはいきません。
よって、計画に協力する私人には、一定の範囲内で信頼保護利益が保障される必要があります。

 

つまり、行政計画の変更によってダメージを受けた私人は、損害賠償による救済が図られます。

 

 
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