違法性の承継の概念
行政行為の瑕疵は、原則取消訴訟により是正されます。そして、出訴期間が経過すれば、もはや瑕疵の是正を求めることはできません。
違法性の承継とは、この行政行為の争訟期間が過ぎた後でも瑕疵を追求することが認められることです。ただし条件として、複数の行政行為が連続して行われなければならず、先行処分の瑕疵を特別に引き継いで後行処分の取消訴訟において追求する形式でなければなりません。
先行処分:先にした行政行為
後行処分:後にした行政行為
違法性の承継が存在する理由
違法性の承継は、原則認められません。
なぜなら、行政上の法律関係は早めに終わらせること求められます。そのため、違法性の承継を認めると、行政上の法律関係を早めに安定させるために行った公定力・不可争力の存在意義が薄れます。そのため、原則は違法性の承継を認めていません。
しかし、違法性の承継をいっさい認めないとすると、別に不都合な事態が起こります。
具体例として、事業認定と収用裁決の判例を例に挙げます。
土地収用を争う者は、土地収用の公益性を認定している事業認定を取消したいと考えます。
ただ、事業認定の段階では具体的な補償額などが決まっていない場合が多く、この時点で訴えを提起しても結果は期待できません。なぜなら、あいまいな段階で訴えを提起しても、違法性を問うことは難しいです。また、専門性のある問題は、裁判所は判断を回避する可能性があります。これは、事業認定される側はとても不遇な事態に陥ります。
そこで、違法性の承継を認めることで、この事態を回避します。それは、事業認定で違法性を問うことが難しいならば、収用裁決の段階で一定の条件の下において事業認定の違法性を問えます。
以上により、違法性の承継の存在を認めると例外的に利益が生まれます。その利益をまとめると、以下のようになります。
@先行処分がすでに不可争力になっていても、後行処分で先行処分の違法を主張できる。
A先行処分に明確な違法の主張が困難な場合でも、後行処分で取消訴訟の提起を可能にすることで、先行処分の違法性を問いやすくする。
よって、違法性の承継を認めるかは行政の安定と原告の救済とのバランスを考えて判断する必要があります。
ちなみに、先行処分に無効な瑕疵があるならば、取消訴訟を提起するまでもなく後行処分も当然無効です。
違法性の承継の主な判例
安全認定と建築確認
違法性の承継が認められる主な判例として安全認定と建築確認もあります。
なぜ認められるかというと、、以下の3つの理由から違法性の承継が認められるとされます。
@建築確認と安全認定は、以前は一体的に行われ、避難または通行の安全の確保という同一の目的を持ち、併用して初めて効果を発揮すること
A安全認定は、申請者以外の者に通知することは予定されておらず、これを争おうとする周辺住民等に手続的保障が十分に与えられてないこと
B周辺住民等が、建築確認があった段階で初めて不利益が現実化すると考えて、その段階まで争訟の提起をしないと判断できないのは不合理
租税賦課処分と滞納処分
課税処分(先行処分)と滞納処分(後行処分)については、違法性の承継は認められない、とされています。
つまり、課税処分の争訟期間が過ぎた後に、「課税処分に瑕疵があるから、これを前提とする滞納処分も違法」というような主張をすることはできません。
この処分のように別々の目的を持ち、独立性が高い行政行為は違法性の承継が認められない、とされています。
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