役に立つ法律の情報・実用法学-行政法、民法など、大学課程の法学

行政立法とは

 

行政立法とは、簡単にいうと行政が定めるルールのことです。
ただし、法律の範囲内で定めなければなりません。

 

これら行政立法は、憲法41条および法律の法規創造力の原則の例外として認められます。
理由として3つの点が挙げられます。

 

@時間的制約:国会の行うべき任務はとても膨大ということ。
A状況の変化への適応性:急速に変化する社会状況にすばやく対応する必要があります。
B議会の専門的技術的能力の限界:専門的技術的な判断を必要とする立法が増えたため。

 

上記のことからわかるように、国会が全ての法律を定めることは事実的に不可能です。
その結果、国会が定めるよりも、実際に現場にいる行政に任せた方がいいという理由から、例外として認められます。

 

 

行政立法の種類

 

行政立法には、法規命令と行政規則の2種類に区別することができます。

 

おおまかな違いとして、まず法規命令は国民の権利義務に関する法規(ルール)の性質を持つ行政立法です。
国民の権利義務に直接影響を与えるため、いわゆる権力行政の一種といえます。。
法規命令は、さらに執行命令と委任命令に分類することができます。

 

次に、行政規則は国民の権利義務に関係しない行政立法です。
つまり、国民には直接関係せずに、行政内だけに関係するルールです。
行政規則は、さらに訓令、通達と告示など様々なものに分類することができます。

 

行政立法の種類 

 

 

法規命令

 

法規命令は国民の権利義務に関する法規(ルール)の性質を持つ行政立法ということを先に話しました。

 

どういうことなのか具体的な例として、信号の規定を挙げてみましょう。
信号は道路交通ではなく、道路交通法施行令2条1項によって規定されています。
そして、道路交通国会によって作られ、道路交通法施行令2条1項は内閣が作った法規命令です。

 

これらがどういったことを意味するのかといいますと、「内閣」という行政が作ったルールであれば特別に法律のように機能しますよ、ということです。
ちなみに、「内閣」がルールを作れば政令と呼ばれます。

 

この例に挙げた「内閣」の他にも、内閣総理大臣がルールを作れば内閣府令、と呼ばれるように内閣以外でも法規命令とすることができます。

 

@内閣→政令
A内閣総理大臣→内閣府令
B各省大臣→省令
D委員会および庁の長官→外局規制
E会計検査院や人事院のような独立機関→規制

 

 

ここまで話してきましたが、法規命令はあくまで憲法41条および法律の法規創造力の原則の例外であるため、簡単に認められるわけではありません。
法規命令は、国会による通常の立法の代わりでなければなりません。
もし、行政が簡単に立法できるようになると、三権分立や国民主権の原理が成り立たなくなります。

 

よって、適正な三権分立、国民主権の原理が成り立つには、国会が法規命令をコントロールする必要があります。
そのため、法規命令の制定には「法律の委任」が必要となります。

 

法律の委任:政令、省令など、法律の範囲で詳細な内容を定めることができること。法律で規定されていない部分は定めてはいけない。

 

 

行政規則

 

行政規則とは、国民の権利義務に関係しない行政立法です。
つまり、国民の権利義務に直接関係しないため法律の委任が必要ではありません。

 

行政規則には、通達、訓令、告示などがあります。
通達、訓令は行政組織法でもお話したとおり、上級行政機関が下級行政機関の権限行使を指揮するために発する命令です。
そして、書面の形式をとるものを通達、書面の形式によらないものを訓令といいます。

 

これらの性質として、原則下級行政機関を拘束します。

 

もし、通達に従わなければ下級行政機関の職員は、職務命令違反として懲戒処分を受ける場合があります。
そして、通達を取消訴訟によって取消すことはできません。

 

なぜならば、取消訴訟の対象となるのは、直接に国民の権利義務に関係するものに限定されるからです。
もし、通達自体が違反で行為が行われたならば、その行為が違反として争うことはできます

 

 

法規命令の分類

 

法規命令は、執行命令と委任命令に分類されるということも先に話しました。
それでは、具体的にどういったものなのか詳しく見てみましょう。

 

法規命令の分類 

 

 

執行命令

 

執行命令とは、法律や命令などを実施するために必要な手続きや形式などを具体的に定める法規命令です。
例えば、行政庁への届出が法律上義務づけられている場合、その届出の形式を定めるときのような場合は、執行命令です。

 

執行命令は、新たに国民の権利義務を創設するものではないため、法律の委任は包括的委任(大雑把な、一般的な委任)で足ります。

 

(例)国家行政組織法12条1項、内閣府設置法7条3項など

国家行政組織法12条1項:各省大臣は、主任の行政事務について、法律若しくは政令を施行するため、又は法律若しくは政令の特別の委任に基づいて、それぞれその機関の命令として省令を発することができる。
内閣府設置法7条3項:内閣総理大臣は、内閣府に係る主任の行政事務について、法律若しくは政令を施行するため、又は法律若しくは政令の特別の委任に基づいて、内閣府の命令として内閣府令を発することができる。

 

委任命令

 

委任命令とは、新たに国民の権利・義務を創設する法規命令です。
例えば、道路交通法施行令によって信号の意味を定める等があります。

 

また、委任命令は新たに国民の権利義務を創設するので、法律の個別的な委任が必要です。
ただし、法律の範囲内で行われなければなりません。

 

 

委任命令が個別的な委任でなければならない理由を説明します。

 

もし包括的な委任ならば、立法機関が行政による命令の制定をより自由に認めることを意味します。

 

例えば、情報公開法の一部分で「手数料について政令で定める」なら具体的です。
しかし、「情報公開(法律)について政令で定める」ならば包括的となります。

 

これらが意味することは、包括的ならば法律自体を変えてしまう可能性があり、憲法41条の規定が無となる、ということです。

 

そうはならないように、委任命令は包括的であってはいけない、というきまりです。
このことを、白紙委任の禁止といいます。

 

もし委任の範囲を超えていた場合、この命令は違法・無効となります。
このことについて、有名な判例がいくつかあります。

 

・サーベル登録拒否事件→委任の範囲を超えない
・幼年者接見不許可事件→委任の範囲を超える

 

裁判所は委任の範囲を超えるか否かについて、委任の趣旨や目的、規律の対象となる国民の権利・利益を考慮して判断しています。

 

 

 
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